セクシュアルハラスメントは、誰の身にも起こり得ることだが、その被害を民事訴訟として訴え、一審敗訴のあと二審で逆転勝訴判決を勝ち取るという事例は、ありふれたものではない。
日本の司法の歴史に判例として残り、現在でも実際のセクシュアルハラスメント裁判にその資料の一部が使われている苦闘の軌跡を、何らかの形で残しておきたいと思った。できれば、必要とする誰でもが書店に並ぶ本を手に取るが如く、簡便に見られるように。
なぜなら、そこに「真実」があるからである。
当時、支援の会が発行していた会報「クラブA」には、裁判の進行状況、法廷でのやりとりの様子、傍聴の感想、原告の言葉等が載せられ、同時期に宇都宮や八王子などで進行していた他のセクシュアルハラスメント裁判の様子や女性たちの性暴力に対する働きかけ等も紹介されている。
これらは、持ち寄られた原稿を原告や事務局の仲間がワープロで打ち、印刷・郵送等の作業をした、「最も原告に近いところから発信された」ものである。
当時から、世間には幾通りもの伝聞や推測、憶測が流れ、新聞やテレビといった巨大メディアでさえ事件を正しく伝え損ねていた。その後発達したインターネットでは、各方面の専門家や趣味人による自己流の解釈が垂れ流し放題である。
加害者を知らず、被害者を知らず、性暴力の何たるかを知らず、民法も刑法も知らず、事件の影響で起きた様々な出来事も知らず、ただ溢れかえる情報の洪水に晒されるのみの知性に、「真実」の見極めようなど果たしてあるだろうか。
しかし、裁判は終結し判決は確定している。
ここにただひとつ、違えようのない事実がある。それは、
加害者・被告が人として誤った行動を起こさなければ、「全ては無かった」。
これだけが、誰にでも容易にわかるはずの事実である。
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